10代・20代のZ世代だけでなく、30代以上の幅広い層へと利用者が急増しているショート動画プラットフォーム「TikTok(ティックトック)」。ビジネスにおける強力なマーケティングチャネルとして注目が集まっていますが、「TikTok広告を始めたいが、具体的な出し方や費用感がわからない」「自社の商品やサービスに合った広告の種類が選べない」といった悩みを抱えている担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事ではTikTok広告の基礎知識から運用型広告・予約型広告といった種類の違い、課金形態や予算の相場、そして実際の入稿手順までを網羅的に解説します。今TikTok広告に取り組むべき最大の理由は、独自のレコメンドアルゴリズムによる圧倒的な拡散力と、ユーザーの購買行動に直結する「TikTok売れ」という現象にあります。精度の高いターゲティング機能と没入感のある全画面動画クリエイティブを組み合わせることで、単なる認知拡大にとどまらずコンバージョン獲得においても高い費用対効果を期待できるのが特徴です。
この記事を読み進めることで、TikTok Ads Manager(広告マネージャー)のアカウント開設方法や設定フロー、効果的な動画制作のポイント、成果を正確に計測するためのTikTok Pixel(ピクセル)の導入方法まで、実践的なノウハウを習得できます。少額予算からテストマーケティングを行いたい個人事業主の方から、本格的なプロモーションを検討している企業のマーケターの方まで明日からすぐにTikTok広告の運用を開始し、成果を出すための決定版ガイドとしてご活用ください。
まずは知っておくべき TikTokという媒体について
TikTok広告を効果的に運用するためには、まずTikTokというプラットフォームが持つ独自の特性と、現在のユーザー動向を正しく理解することが不可欠です。単なる「若者がダンスを踊るアプリ」という認識のままでは、TikTokが持つマーケティングポテンシャルを十分に活かすことはできません。
若者に人気のTikTokとは?
TikTok(ティックトック)は、ByteDance社が運営するモバイル向けのショートムービープラットフォームです。15秒から60秒、最大で10分程度の縦型動画を投稿・視聴できるこのアプリは、BGMやエフェクトを活用したクリエイティブな動画が誰でも簡単に作成できることから世界中で爆発的な人気を博しています。
国内ユーザー数は4,200万人を突破し「社会インフラ」へ
2025年現在、TikTokは日本国内において巨大なメディアへと成長しました。2025年11月の公式発表によると、日本国内の月間アクティブユーザー数(MAU)は4,200万人を突破しています。これは日本の人口の約3人に1人が利用している計算となり、もはや一部の若者だけのアプリではなく、LINEやYouTubeに次ぐ社会的なインフラとしての地位を確立しています。
平均年齢は36歳?「若者向け」は過去の話
「TikTok=10代」というイメージは、すでに過去のものです。ユーザー層は年々拡大しており、現在は30代から40代のビジネスパーソンや主婦層の利用が急増しています。平均年齢も36歳前後まで上昇しており、幅広い世代が情報収集やエンターテインメントとして日常的に利用しています。これにより、金融、不動産、自動車、BtoB商材など、以前では考えられなかったジャンルの広告も高い成果を上げるようになっています。
| 比較項目 | TikTok | X (旧Twitter) | |
|---|---|---|---|
| 拡散の仕組み | コンテンツグラフ(興味関心) | ソーシャルグラフ(人間関係) | ソーシャルグラフ(拡散性あり) |
| メインユーザー | 10代〜40代(全世代へ拡大中) | 20代〜30代女性が中心 | 20代〜40代と幅広い |
| 視聴スタイル | おすすめフィード(受動的) | フィード・ストーリーズ(能動的) | タイムライン(リアルタイム) |
フォロワー0でもバズる「コンテンツグラフ」の仕組み
TikTokが他のSNSと決定的に異なる点は、そのアルゴリズムにあります。InstagramやX(旧Twitter)が「誰をフォローしているか」を重視するソーシャルグラフ型であるのに対し、TikTokは「何に興味があるか」を重視するコンテンツグラフ型です。
TikTokの「おすすめ(For You)」フィードでは、AIがユーザーの視聴態度を分析し、その人が興味を持ちそうな動画を次々と表示します。そのため、アカウント開設直後でフォロワーが0人の状態であっても、コンテンツの質さえ良ければ何百万回もの再生数を叩き出すことが可能です。この「爆発的な拡散力」こそが、企業がTikTok広告に注目すべき最大の理由です。
「音」と「全画面」が作る圧倒的な没入感
TikTokは「Sound On(音声あり)」で視聴されることが前提のプラットフォームです。スマートフォンの全画面を使った縦型動画と、視覚・聴覚を刺激するテンポの良い編集は、ユーザーに強い没入感を与えます。他のSNSのフィード広告に比べて、広告であってもスキップされずに見続けられる可能性が高く、ブランドの世界観を短時間で深く伝えることができます。
TikTok広告がマーケティングで重要視される背景
近年、デジタルマーケティングの戦略においてTikTok広告への予算配分を増やす企業が急増しています。かつては「10代がダンス動画を投稿するアプリ」というイメージが先行していましたが、現在では幅広い世代に影響を与え、実際の購買行動を強力に喚起するプラットフォームへと進化を遂げました。なぜ今、TikTok広告がこれほどまでに重要視されているのか、その背景には「ショート動画市場の爆発的な拡大」と「独自の消費行動」という2つの大きな要因があります。
ショート動画市場の拡大とTikTokの影響力
スマートフォンの普及と通信環境の高速化により、動画コンテンツの主流は「見るために時間を確保する長尺動画」から、「隙間時間に直感的に楽しめる短尺動画(ショート動画)」へとシフトしました。TikTokはこのショート動画市場のパイオニアであり、YouTubeショートやInstagramのリールといった後発機能が登場した現在でも、市場を牽引する圧倒的な存在感を放っています。
TikTokが他のSNSと決定的に異なる点は、フォローしている人の投稿を見る「ソーシャルグラフ」型ではなく、ユーザーの興味関心に基づいてAIが最適な動画を次々と提案する「コンテンツグラフ」型のアルゴリズムを採用している点です。これにより、フォロワーがゼロの企業アカウントであっても、コンテンツの質さえ高ければ数百万人にリーチできる可能性が常に開かれています。
| プラットフォーム | 主な視聴動機 | アルゴリズムの特徴 |
|---|---|---|
| TikTok | 暇つぶし、新しい発見、トレンド把握 | おすすめフィード(レコメンド)が中心。未知の商品やサービスとの偶発的な出会い(セレンディピティ)を生み出しやすい。 |
| Instagram (リール) | 憧れの世界観、友人・知人の近況 | フォロワー関係や既存の好みが重視される。ブランドイメージの醸成やファン化に適している。 |
| YouTube (ショート) | 情報収集、エンタメ、チャンネルの補完 | 検索履歴や登録チャンネルに関連した動画が表示されやすい。深い理解や解説系コンテンツとの相性が良い。 |
また、ユーザー層の変化もマーケティングにおける重要性を高めています。初期の若年層中心の利用から拡大し、現在では30代、40代以上の利用者が大幅に増加しました。これにより、低単価な商材だけでなく、家電や金融サービス、不動産といった高単価商材や決裁権を持つ層向けのBtoB商材であっても、TikTok広告で成果を出せる土壌が整っています。
購買行動に直結するTikTok売れ現象
TikTok広告がマーケティング担当者から熱視線を浴びる最大の理由は、「TikTok売れ」と呼ばれる特有の消費現象にあります。「TikTok売れ」とは、TikTok上の動画をきっかけに商品やサービスが話題となり、爆発的な売上を記録する現象のことです。この言葉は2021年の「日経トレンディ」ヒット商品ベスト30で1位に選出されるなど、社会現象として広く認知されました。
従来のWeb広告では「認知→興味→検索→比較→購入」というファネルを段階的に進ませるのが一般的でしたが、TikTokでは動画の没入感が高いため、認知から購入までの距離が極めて近いのが特徴です。動画を見て「楽しそう」「便利そう」と感情が動いた瞬間に購入に至る、非計画購買(パルス消費)を誘発する力が他の媒体に比べて圧倒的に強いのです。
この現象を支えているのが、一般ユーザーによる投稿(UGC:User Generated Content)です。TikTokでは、企業が作り込んだ広告動画よりも、一般ユーザーやインフルエンサーが素直な感想を語ったり、実際に商品を使っている様子を映したりした動画の方が信頼される傾向にあります。
企業がTikTok広告を出稿する際は、単に商品を売り込むのではなく、ユーザーが真似したくなるような「遊び」や「体験」を提供することが重要です。これにより、ユーザー自身が新たな動画を投稿し、それがまた別のユーザーへと拡散していくことで、広告費以上の宣伝効果と信頼性を獲得できる好循環が生まれます。このように、認知拡大からコンバージョンまでを一気通貫で、かつ爆発的なスピードで実現できる点が、現代のマーケティングにおいてTikTok広告が不可欠とされる所以です。
TikTok広告の種類を目的別に解説
TikTok広告には多様なフォーマットが存在しますが、大きく分けると「純広告(予約型)」と「運用型広告」の2種類に分類されます。マーケティングの成果を最大化するためには、「認知拡大」「比較検討」「コンバージョン(購入・登録)」といった目的に合わせて、最適な配信メニューを選択することが非常に重要です。
ここでは、主要な広告フォーマットを目的別に整理し、それぞれの特徴とメリットを解説します。
新商品の認知を広げるTopViewと起動画面広告
新商品の発売や大型キャンペーンの告知など、短期間で爆発的な認知を獲得したい場合に最も有効なのが「TopView」です。これは、ユーザーがTikTokアプリを起動した直後に、最初の動画として配信される広告枠です。
TopViewは、1日1社限定の独占的な配信枠(予約型)であり、アプリ起動時というユーザーの注目度が最も高いタイミングで、音声付きの動画をフルスクリーンで再生できるという強みがあります。かつて「起動画面広告」と呼ばれていた静止画や短い動画枠の進化版とも言え、現在は最大60秒までの動画配信が可能です。
このフォーマットは、ユーザーが必ず目にする場所に表示されるため、ブランドのインパクトを残すのに最適です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な目的 | 大規模な認知獲得、新商品ローンチ、ブランドイメージの向上 |
| 表示場所 | アプリ起動時の最初の画面(「おすすめ」フィードの最上部) |
| 音声 | デフォルトでON(ユーザー体験を阻害しない形) |
| メリット | 圧倒的なリーチ数と、他社広告に埋もれない独占性 |
強制的に視聴させるのではなく、自然な形でフィードの一番上に表示されるため、広告への嫌悪感を抱かれにくい設計になっています。
コンバージョン獲得に強いインフィード広告
商品購入やアプリインストール、Webサイトへの遷移といった具体的なアクション(コンバージョン)を目的とする場合に適しているのが「インフィード広告」です。
インフィード広告は、一般ユーザーの投稿動画と投稿動画の間に挟まる形で「おすすめ(レコメンド)」フィード上に表示されます。全画面表示かつ音声付きで再生されますが、通常の投稿と同じインターフェースで表示されるため、広告感が薄く、ユーザーにスキップされにくいという特徴があります。
また、インフィード広告には、通常の広告素材を入稿する形式だけでなく、既存のTikTok投稿をそのまま広告として配信する「Spark Ads」という手法もあります。Spark Adsを利用することで、よりオーガニック(自然)な投稿に近い形でユーザーにアプローチでき、エンゲージメント率やコンバージョン率の向上が期待できます。
インフィード広告の種類と特徴は以下の通りです。
| 種類 | 特徴 | 適した目的 |
|---|---|---|
| Brand Auction (運用型インフィード) | 予算やターゲットを細かく設定し、オークション形式で配信。少額から開始可能。 | Webサイトへの誘導 アプリインストール 商品購入(CV) |
| Brand Premium (予約型インフィード) | おすすめフィード内の上位に表示を確約する予約型広告。 | 質の高いリーチ獲得 ブランド認知の定着 |
| Spark Ads | 自社やクリエイターの既存投稿を広告化。「いいね」やコメントが蓄積される。 | ファン獲得 信頼性の向上 リアルな口コミ訴求 |
特に運用型インフィード広告は、AIによる最適化機能が優秀で、興味関心の高いユーザーへ精度の高いターゲティングができるため、費用対効果(ROAS)を高めやすいのが最大のメリットです。
ファンコミュニティを作るハッシュタグチャレンジ
TikTok独自の文化を活用し、ユーザー参加型のプロモーションを行いたい場合に最適なのが「ハッシュタグチャレンジ(HTC)」です。
これは、企業が特定のテーマやダンス、アクションを設定し、指定のハッシュタグを付けて動画を投稿するようユーザーに促す広告メニューです。単に広告を見るだけでなく、ユーザー自身が動画を撮影・投稿するUGC(User Generated Content)を生み出すことで、友人やフォロワーへと情報が拡散していくバイラル効果が期待できます。
ハッシュタグチャレンジは、以下のような要素を組み合わせることで、より大きなムーブメントを作ることができます。
- ブランドエフェクト:高度な画像認識技術を用いた特殊効果(フィルター)を提供し、ユーザーが面白がって使いたくなる仕掛けを作る。
- 公式楽曲:耳に残るキャッチーな楽曲を用意し、聴覚的なブランド想起を高める。
- インフルエンサー起用:人気TikTokerにお手本動画を投稿してもらい、模倣投稿を誘発する。
企業とユーザーが一体となって盛り上がることで、単なる商品認知を超えた「ファンコミュニティ」の形成や、ブランドへの深い愛着(エンゲージメント)を醸成することが可能です。詳細はTikTok for Businessの公式ガイドなどでも紹介されていますが、非常に拡散力が高い一方で、実施には数百万円規模の予算が必要となるケースが一般的です。
TikTok広告にかかる費用と予算の考え方
TikTok広告の出稿を検討する際、最も気になるのが「どれくらいの予算が必要なのか」という点でしょう。TikTok広告の費用は、大きく分けて「運用型広告」と「予約型広告」のどちらを選ぶかによって仕組みや金額感が全く異なります。
ここでは、それぞれの課金方式や相場、そして予算に応じた戦略について詳しく解説します。
運用型広告のクリック単価とインプレッション単価
運用型広告(オークション広告)は、自分で予算や入札額を自由に設定できるため、少額から始めたい企業や個人に適しています。主な課金方式には、クリック課金(CPC)、インプレッション課金(CPM)、動画再生課金(CPV)などがあります。
それぞれの課金方式の特徴と費用の目安は以下の通りです。
| 課金方式 | 概要 | 費用の目安(相場) |
|---|---|---|
| クリック課金(CPC) | 広告が1回クリックされるごとに費用が発生します。サイトへの誘導やアプリのインストールを目的とする場合に適しています。 | 30円〜100円 / 1クリック |
| インプレッション課金(CPM) | 広告が1,000回表示されるごとに費用が発生します。多くのユーザーに認知を広げたい場合に有効です。 | 100円〜1,000円 / 1,000回表示 |
| 最適化インプレッション課金(oCPM) | コンバージョン(購入や登録など)に至る可能性が高いユーザーに対して配信を最適化し、表示回数に応じて課金されます。 | ターゲットや商材により変動 |
| 動画再生課金(CPV) | 動画が一定時間(2秒または6秒など)再生されるごとに費用が発生します。動画の中身をしっかり見てもらいたい場合に使われます。 | 5円〜60円 / 1再生 |
運用型広告では、キャンペーン単位や広告グループ単位で「日予算」を設定します。一般的に、キャンペーン単位での最低日予算は5,000円と設定されていることが多いため、月額で換算すると最低でも15万円程度の予算を確保しておくとスムーズに運用を開始できます。出典1
予約型広告の料金体系
予約型広告(純広告)は、TikTokの運営側に依頼して特定の広告枠を買い取る形式です。確実に多くのユーザーへリーチできる反面、まとまった予算が必要になります。大手企業のブランディングや新商品の大規模なプロモーションで利用されるのが一般的です。
代表的なメニューとその費用感は以下の通りです。
| 広告メニュー | 特徴 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| TopView(起動画面広告) | アプリ起動時に全画面で表示される、最もインパクトのある広告枠です。1日1社限定の独占配信となります。 | 500万円〜 |
| Reach & Frequency | 事前にリーチ数や表示回数をシミュレーションし、固定のCPMで配信枠を予約できます。計画的な認知拡大に適しています。 | 50万円前後〜 |
| ハッシュタグチャレンジ | 企業がオリジナルのハッシュタグとお手本動画を用意し、ユーザーからの投稿を促す参加型広告です。拡散力が非常に高いメニューです。 | 1,000万円〜 |
| Branded Effect | ブランドオリジナルのエフェクトやフィルターを提供し、ユーザーに使ってもらうことで親近感を醸成します。 | 500万円〜 |
予約型広告は枠に限りがあるため、実施を希望する場合は早めの問い合わせと申し込みが必要です。出典2
少額予算から始める場合の戦略
予算が限られている場合でも、戦略次第でTikTok広告の成果を出すことは十分に可能です。まずは運用型広告(インフィード広告)を選択し、目的を絞ってスモールスタートすることをおすすめします。
ターゲティングを絞りすぎない
予算が少ないと、無駄な配信を防ぐためにターゲットを細かく設定したくなりますが、TikTokのアルゴリズムは「広いターゲット層から最適なユーザーを見つけ出す」ことに長けています。最初は年齢や性別などで大きく絞り込み、機械学習に任せることで、結果的に獲得単価(CPA)を抑えられる傾向があります。
クリエイティブ(動画)の質にこだわる
TikTok広告の成果は、動画の面白さや「広告感のなさ」に大きく左右されます。高額な機材を使わなくても、スマホで撮影した自然な動画や、流行の楽曲・エフェクトを取り入れた動画の方が、ユーザーの反応が良いケースも多々あります。予算を広告費だけでなく、複数のパターンの動画を制作するリソースにも配分し、ABテストを繰り返すことが成功への近道です。出典3
TikTok広告の効果測定と分析方法
TikTok広告の運用において、広告を配信することはスタートラインに過ぎません。費用対効果を最大化させるためには、配信結果を正しく計測し、データに基づいた改善(PDCA)を繰り返すことが不可欠です。ここでは、正確なデータ計測に欠かせないTikTok Pixelの設定から、管理画面でチェックすべき重要指標、そしてクリエイティブの改善手法までを詳しく解説します。
TikTok Pixelの重要性と設置方法
Webサイトへの集客や商品購入(コンバージョン)を目的とする場合、TikTok Pixel(ピクセル)の導入は必須です。TikTok Pixelとは、Webサイトに設置する計測用のHTMLコードのことで、これを設置することでユーザーが広告をクリックした後にWebサイト上でどのような行動をとったかを追跡できるようになります。
Pixelを設置しない場合、広告がクリックされた回数までは分かりますが、「商品が購入されたか」「会員登録されたか」といった成果地点(コンバージョン)が計測できません。また、機械学習による配信の最適化や、一度サイトを訪れたユーザーへのリターゲティング配信も不可能になってしまいます。
TikTok Pixelの設置手順
TikTok Pixelは、広告管理画面である「TikTok Ads Manager」の「アセット」メニュー内にある「イベント」から作成できます。主な設置方法は以下の2通りです。
- パートナー連携による自動設置:ShopifyやGoogleタグマネージャー(GTM)などのパートナープラットフォームを利用している場合、連携設定を行うだけで簡単に実装できます。コードを直接編集する必要がないため、初心者におすすめの方法です。
- 手動でのコード設置:発行されたPixelコードをコピーし、Webサイトのヘッダーセクション(<head>と</head>の間)に貼り付けます。開発者モードを利用して、標準イベント(「カートに追加」「支払いの完了」など)を個別に設定することも可能です。
設置後は、「TikTok Pixel Helper 2.0」などのブラウザ拡張機能を使用して、タグが正しく発火しているか必ずテストを行いましょう。
管理画面で見るべき主要指標
TikTok Ads Managerのダッシュボードには多種多様な数値が表示されますが、すべての数字を追う必要はありません。広告の目的に応じて、KPI(重要業績評価指標)として見るべきデータを絞り込むことが分析のコツです。
以下に、TikTok広告の運用で特に重要視される主要な指標を整理しました。
| 指標名 | 意味・概要 | 分析のポイント |
|---|---|---|
| CPM (インプレッション単価) | 広告が1,000回表示されるごとにかかる費用。 | 競合状況やターゲティングの広さによって変動します。高騰している場合はターゲット設定の見直しが必要です。 |
| CTR (クリック率) | 広告が表示された回数のうち、クリックされた割合。 | TikTokでは動画の面白さや引き込み力が直結します。CTRが低い場合はクリエイティブ(動画素材)の改善が最優先です。 |
| CVR (コンバージョン率) | 広告をクリックしたユーザーのうち、成果(購入など)に至った割合。 | ランディングページ(LP)の魅力や使いやすさが影響します。動画とLPの内容に乖離がないかも確認しましょう。 |
| CPA (獲得単価) | コンバージョン1件あたりにかかった費用。 | 最も重要なコスト指標です。目標CPAを下回るように入札価格やクリエイティブを調整します。 |
| ROAS (広告費用対効果) | 広告費に対してどれだけの売上が発生したかの割合。 | ECサイトなど売上が明確な場合に重視します。100%を超えていれば売上が広告費を上回っています。 |
これらの指標は、管理画面の「カスタム列」機能を使って表示項目をカスタマイズすることで、効率的にモニタリングできるようになります。
ABテストによるクリエイティブ改善
TikTok広告において、成果を左右する最大の要因は「クリエイティブ(動画)」です。TikTokユーザーはコンテンツの消費スピードが非常に速く、同じ広告を長く配信し続けると飽きられやすいため、「アドファティーク(広告疲れ)」による効果低下が他の媒体よりも早く起こる傾向があります。
そのため、常に新しいクリエイティブを投入し、ABテストを行って「勝ちパターン」を見つける運用が求められます。
効果的なABテストの要素
一度に多くの要素を変えると何が要因で数値が変化したか分からないため、検証要素は1つに絞るのが鉄則です。
- 冒頭の3秒(フック):動画の離脱が最も多いのは開始直後です。冒頭のインパクトやコピーを変えて、視聴維持率の変化を見ます。
- BGM・楽曲:TikTokでは音が重要な役割を果たします。トレンドの楽曲やナレーションの有無で反応が大きく変わることがあります。
- CTA(コール・トゥ・アクション):「詳細を見る」「今すぐ購入」などのボタンや、動画の最後で促すアクションの文言をテストします。
TikTok Ads Managerには「スプリットテスト」という機能があり、予算を均等に配分しながら、異なるクリエイティブやターゲティングのパフォーマンスを公平に比較検証することが可能です。この機能を活用し、高いCTRやCVRを記録したクリエイティブの要素を分析し、次の動画制作に活かすサイクルを回し続けましょう。
より詳細な設定方法や最新の仕様については、TikTokビジネスヘルプセンターなどの公式情報を参照することをおすすめします。
TikTok広告でよくある質問
TikTok広告の導入を検討する際、企業の担当者だけでなく個人事業主やクリエイターからも多くの疑問が寄せられます。特に運用体制や審査基準に関する質問は多く、ここでは導入前につまずきやすいポイントをQ&A形式で解説します。
個人でもTikTok広告は出せるか
結論から申し上げますと、個人や個人事業主であってもTikTok広告の出稿は可能です。法人格を持たないフリーランスやインフルエンサーであっても、「TikTok For Business」のアカウントを開設し、所定の審査を通過すれば広告を配信できます。
ただし、誰でも無条件に出稿できるわけではなく、広告の品質を担保するためにいくつかの準備が必要です。特に重要なのが、広告の遷移先となるウェブサイト(ランディングページ)の整備です。TikTok広告では、ユーザーが安心して利用できるサービスであることを確認するため、特定商取引法に基づく表記やプライバシーポリシーの有無が厳しくチェックされる傾向にあります。
個人が広告アカウントを開設する際に準備すべき主な項目を整理しました。
| 項目 | 詳細と注意点 |
|---|---|
| アカウント登録 | メールアドレスまたは電話番号で「TikTok For Business」に登録します。 |
| 支払い情報 | クレジットカードやデビットカードが利用可能です。個人名義のカードでも登録できます。 |
| 遷移先ページ | 広告をクリックした後に表示されるWebサイトやLPが必要です。SNSのプロフィールページ等は審査に通らない場合があります。 |
| 店舗/サービス情報 | 屋号や住所、連絡先など、ビジネスの実態が確認できる情報の明記が求められます。 |
また、取り扱う商材によっては個人の出稿が制限されるカテゴリ(金融商品や一部の美容健康商材など)もあるため、事前にTikTok広告ポリシーを確認しておくことを強く推奨します。
動画制作スキルがなくても大丈夫か
「動画編集の経験がない」「プロのような撮影機材がない」という理由でTikTok広告を躊躇する必要はありません。むしろTikTokにおいては、プロが作り込んだCMのような動画よりも、スマホで撮影した手作り感のある動画の方が成果が出やすいという特徴があります。
これを「UGC(User Generated Content)風」クリエイティブと呼びますが、一般ユーザーの投稿に馴染む自然な動画の方が、広告としての警戒心を抱かれにくく、最後まで視聴される傾向にあります。高度な編集スキルよりも、「最初の3秒で興味を惹く企画」や「楽曲の選定」の方が重要です。
さらに、TikTok公式が提供している無料の動画制作サポートツールを活用すれば、素材を用意するだけで簡単に広告動画を作成できます。
| ツール名 | 特徴 |
|---|---|
| TikTok Video Editor | ブラウザ上で使える公式の編集ツールです。著作権フリーの楽曲やフォントが豊富に用意されています。 |
| スマート動画 | 複数の画像や動画素材をアップロードするだけで、AIが自動的に楽曲に合わせて編集してくれる機能です。 |
| CapCut | ByteDance社が提供するモバイル動画編集アプリです。豊富なテンプレートがあり、初心者でもトレンド感のある動画が作れます。 |
このように、現在は動画制作スキルがゼロでも、テンプレートやAIツールを活用して効果的な広告を作れる環境が整っています。まずは手持ちのスマートフォンで撮影した動画からテスト配信を始めてみるのが良いでしょう。
まとめ
本記事では、TikTok広告の種類や費用、具体的な出し方から効果測定の方法までを徹底解説しました。TikTokは今や単なるエンターテインメントアプリの枠を超え、若年層だけでなく幅広い世代の購買行動に直結する「TikTok売れ」を生み出す強力なマーケティングプラットフォームへと成長しています。
TikTok広告で成果を出すための重要なポイントは、以下の3点に集約されます。
第一に、目的に応じた広告フォーマットの選定です。新商品の認知拡大を狙うなら「TopView」や「起動画面広告」、コンバージョン獲得を重視するなら「インフィード広告」、ファンコミュニティの形成なら「ハッシュタグチャレンジ」といったように、自社のゴールに最適な種類を選ぶことが成功への第一歩となります。
第二に、予算に応じた柔軟な運用戦略です。TikTok広告は高額な予算が必要なイメージを持たれがちですが、運用型広告であれば少額からスタート可能です。まずは無理のない予算で配信を開始し、クリック単価やインプレッション単価を見ながら徐々に投資額を調整していくスモールスタートが推奨されます。
第三に、クリエイティブの質とPDCAサイクルです。ユーザーは作り込まれた広告よりも、TikTokの文化に馴染んだ自然な動画を好む傾向にあります。高度な動画編集スキルがなくても、スマホ1台で撮影した素材で十分な効果が期待できます。重要なのは「TikTok Pixel」を正しく設置してデータを計測し、ABテストを繰り返してクリエイティブを改善し続けることです。
ショート動画市場は今後も拡大が予想されます。競合他社が本格的に参入する前の今こそ、TikTok広告を活用して新たな顧客層へのアプローチを開始してみてはいかがでしょうか。
このブログの監修者
都留 樹生
学生時代の友人である社長に拾われ創業時にFREEDiVEにジョイン。 成功報酬(アフィリエイト)領域の広告に対する知見と戦略設計で、200社以上の運用実績を持ち、BPXを売上0から7億円の企業に。 個人でも8年間PPC系のアフィリエイターとして活動している。